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変人に同類と思われてしまうのか!?


仮面浪人の大学時代、私の頭には医学部に行く事しかなかった。それでも一応大学には通っていたので、コンパは行かなかったけど、お茶したりお昼一緒に食べるお友達も出来たり、気分転換にテニスしたりしてそれなりに楽しんでいた。

クラスに女の子は6人。一人はフランス人の留学生で、言葉が不十分なので大人しく、他のみんなは推薦なのでのんびり屋だった。

男の子も全員エスカレーターなので、そういうノリでイベント屋みたいな人が多かった。彼等は女の子をとっても大事にする人種で、まるで文系の人達のようだった。

しかし、一人だけ変人がいた。当世風のおしゃれもせずに、チェックのシャツを着て、アディダスバックを持ち、銀縁眼鏡をかけている。そういう人は他に一人もいなかった。後に早大理工ではそんなんばっかだったので、特別彼が変人って訳じゃなかったんだろうけど、その時はちょっと「何この人?」ってぎょっとする感じだった。

彼は人に何を言われようと我が道を行くタイプで、ハッキリ言ってハブんちょだった。テスト対策用のシケプリも彼にだけは回らず、存在は完全に無視されていて、「不気味な奴」と、遠巻きにされていた。彼のようなオタクな外見を持っていると、それだけで異質なのだった。

それだけじゃなく、時々一人でブツブツ言ってはニヤ〜っと笑うので、本当にみんな気味悪がっていた。

話変わって、大学では学生保険っていうのがあって、指定の病院で学生証を見せるだけで、無料で診察を受けられるようになっていた。私は当時激しい胃痛で、よく学内の診療所に薬を貰いに行っていたんだけど、そこの先生が、東京女子医大に行って精密検査を受けてくれば?と言うので、行く事にした。東京女子医大は指定病院で無料だった上、学生証を出すと、待たずに先に見てもらえるのだそうだ。

私はその日は早退する事にして、池袋から丸の内線に乗って大手町で東西線に乗り換え、早稲田に向かった。早稲田からはバスが出ていた。もうちょっと早い行き方もあったのかもしれないけど、それまで一人で電車に乗った事がなかったので、慣れた通学路以外の電車は怖くて乗れなかった。

教室で早退するからと告げると、一人のお友達が付いていってあげると言ってくれたが、悪いので断った。お友達は私がちゃんと東京女子医大病院にたどり着けるかどうか、本気で心配していた。私はそれくらい頼り無く見える少女だった。(18は少女でいいよね?)

大手町で東西線に乗り換えるまではいつもの通学路なので、そこまでは無意識に行った。東西線で帰るのとは反対方向の電車に乗って、やっとホッとして座り、ぎょっとした。何と、オタクの彼が5メートルくらい離れたとことに立って、こちらを見ているではないか。

すごい怖かった。何で彼がこんなところにいるんだろう。もしかして付けて来たのか!? どうしよう、怖いよぉ〜やっぱお友達に一緒に来てもらえばよかった、えーん。と思いながら、目をあわせないように下を向いていた。

早稲田に着いて私が降りると、ちょっと間を置いて彼も降りる。バス停に並ぶと、少し離れたところでこちらを見ている。が、バスが来ると駆け寄って来て同じバスに乗って来た。ますます怖くて、どうしようどうしようと思っていたが、どうする事も出来ず、そのまま気付かないフリで病院まで行った。

東京女子医大では、診療所の先生の言う通りすぐに見て貰えて、予約もなしに胃カメラをすることになった。

その間も待合室のちょっと離れた所に彼は立っていて、こちらを見ていた。もう私を付けて来たのは間違いなかった。

私は神経性胃炎と診断され、薬を貰った。

一体どこまで付いて来るんだろう。家まで来られたら困るなと思ったけど、胃が痛くて早く家に帰りたかったので、そのまままたバスに乗って早稲田にむかった。彼は来た時と同じように、少しだけ距離を取って、とうとう家まで付いて来た。

「何か用なの?」と聞こうかどうしようか迷ったけど、変人と関わらない方がいいと思い、そのまま家に入った。家の窓からそっと覗くと、しばらく佇んでから彼は帰って行った。家を知られてすごいマズイ事をしたかと急に心配になり、胃も最高潮に痛くなって来て、薬を飲んで一人で横になった。誰もいないところに押し入られなくてよかったと思いながら、薬が効いて来て眠ってしまった。

それから毎日のように、私が家に帰る時に彼は付いて来るようになった。大学でも噂になり始め、みんな心配して一緒にいてくれたが、さすがに毎日誰かに家まで送ってもらう訳にもいかないので、用心しながら明るいうちに帰るようにしていた。

お昼の時も、移動教室の時も、教会へ行っても、図書館に行っても、気付くと彼は側にいた。こういうのをストーカーというのかもしれないが、当時はそんな言葉はなかった。でも別に危害を加えるでもないし、何もされた訳じゃないので、訴える訳にもいかない。彼はただただ私の行く所にどこでも付いて来た。

彼が私をつけまわしているとクラス中に知れ渡った頃、クラスでも中心人物の明るい男の子が、みんな見ている前で彼に詰め寄った。「何で付け回すんだ」とか、「いい加減にしろ」とか、「気持ち悪い」とか、「みんなのマドンナを独り占めしようとは厚かましい」とか。「は?いつマドンナになったんだ?」と思いつつも、みんなノリがいいので、「そうだそうだ」とはやし立てたり、口笛をふいたりお祭り騒ぎなので、私も合わせておいた。女の子は誰でもマドンナなのだった。そういうふざけた人達ばかりだった。でも内心では、逆恨みされないかハラハラしながら見守っていた。

彼は結局一言も答えず、最後にニヤ〜っと笑った。

みんな気味悪がって、「今度付きまとったらただじゃおかない」とかなんとか言って、それきり彼を無視した。でもそれからはたぶん付いて来なくなった。それかもっと離れて分からないように付いて来たのか知らないけど。

そして次の年、早稲田に入った途端にやっぱり変人につけまわされた。彼ほど変じゃないにしても、普通ではないことに変わりない。家までは付いて来なかったけど、駅までは必ず付いて来るし、図書館でもすかさず隣に来るし、毎日電話がかかって来るが、別につきあって欲しいとか言う訳でもなく、よくわからない人だった。

教室で、振り返ると必ずその人が後ろに座っていて、ちょっと気持ち悪かった。アニキが追っ払ってやると言って脅したみたいだが、全然こたえていなくて、アニキがいない時は懲りずに私の後を付いて来て、勝手に一人でしゃべっていた。

思い出すと他にも色々……

変人を引き寄せる体質なんて、嬉しくない。

素敵な人は全然引き寄せられてくれないのにさ〜

思うに私は知性の低い人に好まれる傾向があるような気がする。知的な人からは相手にされないなんて、寂しいね。教養がないからかな?

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