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ファーストキスは幼稚園の時!


私は小さい時から同じ家に5年以上住んだ事がない。大抵は2年くらいで転勤でもないのに引っ越しをする。だから幼稚園から高校まで、必ず転校している。

最初の幼稚園の事はあまりよく覚えていないけど、無口で負けん気が強かったので、男の子にからかわれると無言で噛み付いてしまい、よくおばあちゃんが謝りに行っていたのだけ覚えている。私は悪くないと言って絶対謝らなかった。

転校先は保育園の年中(すみれ組)だった。急に途中から入ってスモッグがみんなと違ったので、同じのが出来るまでの間、からかわれたり物を隠されたりという他愛もない意地悪をされた。でもそんな事は別に苦にならなかった。

スモッグが出来て来て、やっと田舎の保育園に溶け込んで来た頃、年長になるためのクラス替えがあった。私はばら組になった。せっかく仲良くなったお友達とはみんな別のクラスになってしまった。でもどうせ虚弱で、1ヶ月に合計1週間しか通えなかったから、どうでもよかった。

私が休んでばかりいたのは本当に虚弱で熱ばかり出していて、冬の殆どは喘息に苦しんでいたからなんだけど、先生はそれが気に入らなかった。思えば一番最初にいじめらしいいじめを受けたのは、この時だったかもしれない。

クラスには近所のお肉屋さんの太った娘がいて、物凄く我が侭だった。名前、忘れちゃったけど彼女はクラスの中心だった。みんな彼女が怖くて言いなりだった。彼女は私を目の敵にし、先生は彼女の味方だった。

私は身体が弱かった為、家の中で絵を描いたりお話をつくったりするのが一番好きだったので、幼稚園の授業ではお絵描きと塗り絵の時間が大好きだった。でも、私が大人しく色を塗っているだけで、生意気だと言って上から茶色などの汚い色でぐちゃぐちゃに描かれてしまうのだった。

塗り絵やお絵描きは終わると一人一人、前にいる先生のところに持って行って丸を貰う事になっていた。私はいつでもぐちゃぐちゃに描かれたものを持って行かなければならなかった。先生はその度にこれは何だ、真面目にやれと怒って、私は一人廊下に立たされた。

一番始めだけ、お肉屋さんの子にやられたと言ってみたが、人のせいにするんじゃないと余計怒られたので、もう言わない事にした。だって先生はその時ちゃんと教室にいて、誰がやったか知っているはずだった。それを知らない振りするんだから、言っても無駄だ。私は妙に諦めがよくて冷めきった可愛気のない子だった。

廊下に立たされた日は必ず熱を出して、次の一週間休む羽目になった。

先生が私を嫌っているのは凄くよくわかったけど、理由はわからなかった。

保育園ではいつもお昼寝の時間がある。私はその時間が大嫌いだった。既にこの頃から眠れない体質だったので、寝返りばかり打ってしまい、やっぱり先生に怒られて廊下に出されるからだ。一人ぼっちで長い間廊下に立っていると、他にする事がないから色々考える。

どうして先生はいつも私にばかり意地悪をするんだろう。肉屋の娘は誰にでも意地悪だし、塗り絵をグチャグチャにするのは私が一番上手だからだと納得出来た。でも、先生が意地悪する理由はどんなに考えてもわからなかった。

たまにしか行かない保育園で、行事の度にのけものにされるのは、とても悲しかった。

一番悲しかったのは、スイカ割りの時。理由は忘れちゃったけど、みんなが外で楽しそうにスイカ割りをしているのを私はたった一人、教室の窓から眺めていた。別にスイカなんか食べたかった訳じゃない。食べ物は家に溢れかえっていたし、私は食の細い口のキレイな子供だった。でも、スイカ割りはやってみたかった。

お遊技会では眠れる森の美女の劇をやることになって、先生はたぶん意地悪のつもりで、無口な私にお姫様役をやるように言った。が、私は引っ込み思案で無口な訳じゃなく度胸は座っていたので、臆する事なく平然とセリフを言えた。先生は私が泣き出すだろうと思ってほくそ笑んでいたのだけど、平然としているので面白くなくなって、もういいと言った。何がもういいのか知らないが、私は突然役を降ろされ、お姫さまは太った肉屋の娘が代わった。彼女はざまーみろと舌を出した。確か理由は、私が急に休むと困るからって言ってたが、それなら最初からお姫さまをやれとは言わなかったはずだ。それとも一旦与えた役を取り上げるといういじめだったのか?

保育園は給食だったが、午後になるとおやつも出た。おせんべとか、キャラメルとか、たいしたものじゃない。私はそれをいつもハンカチに包んで家に持って帰っていた。私はおやつは食べない子だったが、妹は食いしん坊だったので、持って帰って妹にあげた。

ある日肉屋の娘がそれを見とがめて、私のおやつを取り上げた。私はおやつに興味がなかったので、肉屋の娘を放っておいた。でもその時隣の席の男の子が「返せよ」と言って肉屋の娘に刃向かった。

今まで誰一人として肉屋の娘に刃向かったものはいない。男の子は肉屋の娘と取っ組み合いの喧嘩をして、私のおやつを取りかえしてくれた。名前も忘れちゃったけど、初めて私の味方をしてくれる子がいたって事がすごく嬉しかった。でも感謝の気持ちをどう表わせばいいのかわからなかった。それで何を血迷ったか「ありがとう」と言う代わりに「私と結婚して」といきなりプロポーズしてしまった。

教室はしーんと静まり返った。肉屋の娘でさえ黙って様子を見守っていた。みんな男の子の返事を待っていた。私も待っていた。男の子はちょっとしてから「いいよ」と答え、私は公衆の面前で誓いのキスをした。なんてませガキなんだ。

そこへ先生が入って来た。肉屋の娘がすかさず先生に、私と男の子にいじめられたと泣きながら言い付けた。またしても私は騒ぎを起こした張本人として怒られてしまった。男の子は先生に、肉屋の娘がおやつを取ったからだと訴えたが、先生は聞く耳持たず、なぜか私だけを廊下に出した。

その日の帰り、私は肉屋の娘以外の3〜4人の女の子に呼び出され、下校バスが来るまでの間、ジャングルジムの一画に閉じ込められて周りを囲まれた。何を言われたかもう忘れてしまったが、女の子は私に校庭の砂を食べろと言った。私は砂くらい食べられると強がって、砂を堂々と食べてみせた。女の子は私を汚いと言い、結婚を約束した男の子に言い付けてやると言った。勝手にすればとか、また生意気な事を答えたような気がするがあまり覚えていない。覚えているのは口の中のじゃりじゃりした感覚だけ。何故私がそこで意地を張って砂を食べなければならなかったのかは、全く思い出せない。

その後男の子とどうなったのか何も覚えていないが、たぶん冬に突入して保育園に行かなくなったから覚えていないんだと思う。お陰でナイトを射止め損なった。

(うーん、書いていたら私が何故いじめられるのか、わかるような気がして来たよ。幼稚園から既に男の子に色目を使って女の子に睨まれていたとは! 自業自得だったのね)

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